オススメ映画2010年代

ちゃんへん.の独断と偏見による2010年代オススメ映画(現在800作品中44作品紹介)。

※2019年5月1日よりHPをリニューアルし、映画ランキングも順次再アップしています。

【かぐや姫の物語】

人間に与えられし命の時間はあまりにも短くて儚く、そして尊いものである。そして、我々人間は何のために生まれ、何のために生き、生きることはどういうことなのかという問いを見失いがちである。この作品は、そんな生命讃歌のヒントを私たちの生命エネルギーに叩き込んでくれる。終盤の月からのお迎えのシーンはずっと涙が止まらなかった。あの圧倒的な美しさを文字で表現するなんてできない。アニメでは戦国大合戦以来、ここまで感動した作品は本当に久しぶりです。

【アルゴ】

僕が今まで映画を見てきた限りでは、アメリカの映画というのは、全体で見ると『アメリカ万歳』的な感じで表現したり終わったりする作品が多いのだが、この作品は善悪ではなく、救出作戦そのものにスポットを当てているのが非常に好感を持てる。アメリカが正義なんだとか、イランが悪なんだとか、そんなものは排除し、ちゃんと人間を描いている。緊張感漂う演出と、その緊張感が更に高まるトラブルの数々。皆さん、この作品は観ないと損ですよ。

【キック・アス】

最高すぎて映画館で6回も観てしまった。まず主人公の「なぜ誰もヒーローにならない?」この動機が良い。しかし、この主人公が情けないくらいヘタレでめちゃめちゃ弱いのだ。でもそれは、本当の主人公を引き立てるための前ふりで、この作品の一番の魅力はヒット・ガール。彼女の登場と共に物語は一気に加速する。バイオレンスなアクション、アップテンポな音楽、おまけにめちゃめちゃ強くて可愛い。ただのヒーローモノや暴力映画ではない傑作です。

【インターステラー】

クリストファー・ノーランがまたまたとんでもない傑作を生み出してしまった。物理と科学の知識を駆使し、重圧な映像と音楽、そして哲学的な宇宙空間と人間ドラマ、さらに練りに練られた脚本。どれをとっても文句のつけどころがなく、SF、ミステリー、アドベンチャーとしても高い完成度で私たちを楽しませてくれる。時空を超えた愛もあり、つい泣けてしまう場面もしばしばある。もしかしたらこの作品は映画社会の一つの分岐点になるかもしれない。

【ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜】

どうしても重くなってしまう人種差別という深刻な問題を、明るくユーモラスに描いた社会派映画。とは言うものの、差別を扱う映画というのは、差別する人を描いていることが多いが、この作品は、差別をしない人に焦点を当てた映画なのだ。人種や血の繋がりなど、そういったレベルを超越し、人を愛する事ができる人を描いているのだ。差別する側は、罪悪感や差別意識すらないかもしれない。相手にとって普通の状態に自分が反発することは、時に良くない選択なのかもしれない。

【インセプション】

作品を世に出せば確実にヒットするクリストファー・ノーラン監督。この作品は、あらゆる映画好きを心底から唸らせたであろう。誰でも思いつきそうな夢の中を題材にしたこの作品だが、ここまで脚本を緻密にまとめ上げ、映像化を実現したのは本当に凄い。天才としか言いようがない。仮想現実をテーマにした映画は、他では『マトリックス』が有名であるが、この『インセプション』は、人間の想像力を刺激する全く新しいジャンルと言える。

【トイ・ストーリー3】

トイ・ストーリーを初めて見たのは小学生の時だった。あれから数年経ち、アンディも僕も年をとり、本作の冒頭のシーンから必死に涙を堪えてたが、やはり無理だった。最後にアンディがボニーとおもちゃで遊ぶシーン。おもちゃたちにとって、どれだけ楽しい時間だっただろう。そして、アンディがおもちゃたちと別れる時、人前で動く事ができないウッディの手で、ボニーがアンディに手を振ってくれたことは、ウッディにとって本当に幸せなことだっただろう。

【ヒックとドラゴン】

ストーリーは単純だが、心に響くものがあった。誰もが一度は少年少女の頃、ドラゴンに憧れたり、またそういう空想上の生き物を想像し、胸躍らせた頃があるんじゃないか。この作品は、子供心を蘇らせてくれる。ドラゴンと友達になったり、ドラゴンの背中に乗って空を飛んでみたり。また、これは友情をテーマにしていると同時に、ヒックの成長物語でもあるのだ。ぜひ観て頂きたい。あと、余談ではあるが、スティッチを作った人なので、ドラゴンがめちゃめちゃ可愛い。

【冷たい熱帯魚】

最初に書いておきますが、結構グロいシーンがたくさんあるので、もし鑑賞しようと思う方はご注意下さい。さて、この作品はでんでんの怪演と園子温監督のぶっとんだ世界観が大半を占めている。もう本当に凄まじくて度肝を抜かれました。登場人物の全員が愛に飢え、その冷えきった雰囲気を醸し出しています。ただ、この作品はエロとグロのオンパレードですが、決してそれだけではないのです。最後の親父から娘に放つ言葉と、娘が親父に吐く台詞に戦慄が走りました。

【セッション】

最初から引き込まれ、圧倒された。特に最後なんて言葉にならない。人間が持つありとあらゆる感情が一つになって画面から呼び出し、自分の感情を無力化させる。感動という言葉でさえ、この作品にはちっぽけ過ぎる言葉だろう。フレッチャーの気持ちは痛い程分かる。これは人によってはイタい様に見えるのかもしれないが、現代では異常と言われそうな一流の育て方は、逆に現代が甘くなったのかもしれない。才能は狂気で開花するものだと僕は思っている。狂気は努力を凌駕する。

【ブラック・スワン】

ナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技はもちろん、キャスト全員が凄く良くてこの作品に説得力が生まれた。この作品は一言で言えば『自分との戦い』なのだが、自分の中の弱い部分を削ぎ落とし、かつ技術の面でもスキルアップしていくのは本当に難しいことだ。しかし、自分との戦いに打ち克ち、自身が最も高い頂きに到達した時にしか噛み締められないのが『Perfect』なのだろう。最後の表情は、主人公ニナの達成感であり、演じるナタリーの満足感でもあるのだろう。

【ブルーバレンタイン】

人の人生には、いくつかの『別れ』が存在する。この作品は、男女の別れの現実を真に突きつけられた気がした。運命的に結ばれた二人が、永遠の愛を信じる幸せな過去と、永遠に変わらない愛なんてないと知った現在。この作品は、恋愛の崩壊を描いたラブストーリーである。鑑賞中、心の中でおせっかいな言葉をかけたくなるほどウズウズしながら観ている自分がいた。この作品のエンドロールは本当に傑作で、悲しみの花火が上がった最後だった。幸せになってほしい。

【チョコレートドーナツ】

鑑賞後『子は親を選べない』という言葉が浮かんだ。マルコを育てるには誰がふさわしいのか?それがルディとポールであることを鑑賞者のほとんどが判断するのではないだろうか。しかし、彼らが挑む親権争いは、女性が産みの母である事実と法律の壁であった。僕は今まで、映画を通じて裁判や法制度のあり方について色々と考えさせられてきたが、本作もその一本となった。重たい内容の話ではあったが、鑑賞中は何度も胸を痛め、鑑賞後は心が温まった。

【クラウド アトラス】

これを鑑賞した人は、手塚治虫の『火の鳥』を思い出す人も少なくはないだろう。6つの時代と6つの物語。序盤から非常に複雑な展開だが、点と点が次第に一本の線になっていくように集約され、その線はやがて円になる。6つの独立したエピソードは、まるで五線譜上の六重奏さながらであり、個と個を隔てるものがあるならば、それを繋ぐものもあるはずだ。それはまさに表裏一体であり、その人類の積み重ねが時代を超えてくるのなら、因果応報は必ず存在するのである。

【ゼロ・グラビティ】

90分という近年では短めとなった時間に留め、これだけのボリュームを描ききったことに脱帽だ。もちろんそれだけではない。宇宙空間での事故という絶体絶命の危機的状況において、無重力、無酸素、無音といった、地球では味わうことのない絶対的恐怖を映像で表現しきったことにも頷ける。ストーリーは凄くシンプルで、結末は誰でも想像できるだろう。だからこそクライマックス、主人公ライアンの無重力下での涙や、重力下での笑みは私たちに生きる喜びを教えてくれる。

【八日目の蝉】

この作品は、女性たちの母性が生んだ悲劇が描かれている。この映画のタイトルの『蝉』とは、誘拐犯の希和子を意味するのだろう。蝉の寿命は一般的に七日間と言われている。罪を償い、出所した希和子だが、彼女の罪はあまりにも重く、社会に戻っても肩身の狭い思いをするだろう。彼女の罪は永遠に償えないのだろうか。そんな彼女は生きていても意味はないのだろうか。八日目を向かえ、死ななかった蝉(彼女)に対し、それでも生きなさいという希望の手を差し伸べる一本なのだろう。

【ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日】

全てが良い意味で嘘みたいだ。嘘みたいにリアルな動物たちと、嘘みたいな自然の美しさ。そして、嘘みたいな話。その嘘みたいなものがより本物のような世界に僕たちを誘い、そして物語を体験させてくれる。この作品の脚本は本当に繊細に練られていて、パイ少年の名前の由来からおじさんの語り、そして沢山の宗教観念や動物たち。この全てが伏線であり、最後の最後で全回収。このアッパレとも言える芸当には本当に驚かされた。

【レ・ミゼラブル】

この物語には、悪い人だとか、根本的にそういった間違っている人というのはいない。登場人物のすべてが『生きる』というテーマで生き、時代的にも必死に生きる登場人物たちを誰一人否定することはできない。だからこそ、人間はすれ違い、時にぶつかり合う。そして、この物語が150年以上の時を超えて現在でも愛され続けるのは、人間の本質的な部分が集約されているからなのだろう。この踊らないミュージカルは、これから先も色褪せずに未来永劫愛され続けるだろう。

【そして父になる】

僕個人が想うに、女性は子供を産んだ瞬間から母になるのだろう。それは命を身籠り、出産という経験を経ているからやと思う。その一方で男性は、父になるまでに少し時間がかかる。本当の子供とは何だろう。血の繋がった子なのか。それとも共に過ごした子なのか。しかしながら、この作品はそれらを問う映画ではなく、父になるとはどういうことかを問う作品なんやと思った。そういう意味で、母親ではなく、あえて父親を主人公にした意味がよく分かった。

【映画 けいおん!】

こんなオタク向けな作品をオススメなんて、ちゃんへん.血迷ったか!と言う人がいるかもしれないが。違うんや、聞いてくれ。この作品には、ネガティブがほぼ見当たらない。この作品に登場する女子高生たちは、好きと楽しいと美味しいだけで日々を過ごしている。大人になると、好きなことがいつの間にか辛くなったり嫌いになったり、次第に嫌なことにしか目を向けられず、そんな自分も嫌いになってしまうことはないだろうか。もう少し彼女たちを見習おうと思ったとてもいい作品だ。

【最強のふたり】

実話の中でも脚本や演出等、非常によく仕上がった作品だと思います。事故で首から下が麻痺した大富豪のフィリップと、彼を介護するスラム出身の黒人青年ドリスの友情物語。介護者を選ぶ面接で「彼は私を同情していない」という理由でドリスを採用する。フィリップは特別扱いをしないドリスと居ることで心を癒し、そしてドリスはフィリップから社会でしっかり生きていけるように色々なことを学んでいく。この作品を鑑賞した僕も、二人から色々なことを教わった。

【告白】

後味の悪いだけの作品は、二度目は拒絶したくなるが、この作品は違った。互いに相手を見下す者たちの悪意に満ちた衝撃作品。人の弱さをポジティブに描き、負の雰囲気が漂いつつもどこか心地よく、むしろ成長途中の本当の人間を忠実に表現しているのではないか。だからこそ、後味は悪いが、それでも感情のどこかに爽快感が残っている。その場の雰囲気に流され、悪さに身を任せる少年法に守られた子供たち。自分の大切なモノが壊れないと気づかないのだろう。

【桐島、部活やめるってよ】

この作品は、おそらく現役の中高生や大学生には全く響かないかもしれないが、高校生活を謳歌した人ならば強烈に感じる何かが心に残るはずだ。三十路の僕が作品に出ている若者達の『若さ』なるものはないのだが、かつてその若さを持っていた自分の記憶が共鳴したのだ。この作品を鑑賞する誰もが、登場人物の誰か一人に感情移入できるはずだ。それによってこの作品に対する姿勢はそれぞれ変わるけれども、誰もが懐かしい日々を思い出し、思い出は価値ある物に変えてくれるはずだ。

【ジャンゴ 繋がれざる者】

正直言うと、この作品は何がどう良かったのかをあげるのが非常に難しい。奴隷制度に苦しむ黒人たちの悲壮感?白人たちの存在感?それともキャラクターの素晴らしさ?脚本や演出の優秀さ?タランティーノのお家芸である会話劇?どれをピックアップしてもハイレベルだ。また『憎しみは何も生まれない』的なテーマの作品は今まで数多く存在したが、結局のところそんな言葉は綺麗ごとで、絶対的に裁けない存在を相手にした時、それは復讐という手段以外はないのかもしれない。

【ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル】

かつて一世を風靡したスパイアクションの王道ではあるが、2と3は決して良くはなかった。しかし、この作品は違った。次々に登場する魅力的なスパイグッズや伴うトラブル。ミッションやカーチェイスなど、最後まで目が離せないというのはまさにこのことで、スパイアクションという一言だけで片付けられない領域に到達してしまった。少しいっちょまえに言わせてもらうなら、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントは、本当の意味でこの作品で存在感が確立されたと思う。

【X-MEN:ファースト・ジェネレーション】

シリーズの中で間違いなく最高傑作だろう。人種差別というテーマはそのままに、ミュータントの起源、X-MEN誕生秘話、そしてキューバ危機という実際に起こった問題をうまく取り入れ、ミュータント一人一人の能力の見せ方はもちろん、ドラマとしても分かりやすくて重圧な内容となり、最初から最後まで飽きなかった。今までのシリーズは対立している状態で物語が進んでいたが、この作品は対立するきっかけとなったあたりを描き、現実味と説得力があった。

【ウルフ・オブ・ウォールストリート】

一言で言えば「欲望と金に溺れ一代を築いた人間の栄光と破滅」。とにかく3時間終止派手な映像で、見ているこっちも遊んで疲れてしまいそうな錯覚をするくらいゴージャスである。映像や音楽、あと脚本と飽きさせない演出で娯楽映画としては最高級の作品だと言える。しかし、レオナルド・ディカプリオは本当に凄い俳優や。出る映画出る映画で全然キャラクターが違う。まるで本当にこんな人なんちゃうかと思うくらいの演技を毎回するから尊敬です。

【シュガー・ラッシュ】

僕は昔、テレビゲームが本当に好きやった。母にゲームソフトを買ってもらっては、お店を出た瞬間には家に帰るのが待ちきれずに開封し、説明書を読んでワクワクしながら家に帰ったのを覚えている。もちろん内容も素晴らしいが、この作品は、ある意味でそんな経験をしたことのある大人になった人たちの作品なのかもしれない。懐かしくも昨日のことのように蘇る8bitの音楽やキャラクターたちに再会できて涙が出た。きっと、心のどこかに存在する子供の頃の僕が感動したのだろう。

【塔の上のラプンツェル】

ディズニーの記念すべき50作目。正直な、ライオン・キング以降のディズニー長編アニメ17作品はどれも微妙で、ディズニー映画はもうダメかと思ってたんやけど、これぞディズニーと思わせるほどの傑作!生まれてから18年間。一度も塔から外に出たことのない主人公ラプンツェルが、外の世界に憧れるお話。そして、この作品の醍醐味は圧倒的な映像美である。特に星の美しさは芸術的で、鑑賞している自分も立ち止まってゆっくりと空を眺めたいほどだ。

【海にかかる霧】

普通の漁船の船長たちが、不景気のため朝鮮族の人たちを密航させるというお話。観たら分かると思うが、漁船のメンバー全員が、もうそういう人にしか見えないくらいの演技力で世界に入り込めた。そして、やはりポン・ジュノ監督はすごい。韓国映画独特というべき怖い雰囲気をしっかり表現できている。そしてそして、キム・ユンソクに包丁や武器を持たすとほんまに怖い。韓国で一番似合うかもしれない。実際に起こった事件らしいが、リアルを想像するとほんまに頭おかしくなるやろな。

【127時間】

ある日、自然を愛する主人公アーロンは、ロッククライミングを楽しむためにブルー・ジョン・キャニオンへと旅立つ。しかし、その先で彼は自分の右腕が巨大な石に挟まれ身動きがとれなくなってしまう。人目につかない場所で孤立した彼は、あらゆる手段で脱出を試みるという物語。この作品を鑑賞した後、いつも見慣れた風景が少し違って見えたのを思い出す。どんなに孤独で、絶望で、後悔しても、希望だけは失ってはいけないということを教えてくれる。

【ミッション:8ミニッツ】

列車の爆破テロ事件が起こり、アメリカ陸軍のコルターは、政府が開発したシステムにより、テロの犠牲になった一般乗客の死ぬ直前の8分間の記憶に侵入し、犯人の手がかりを追う任務を与えられる。なかなか犯人に辿り着くことができず、何度も列車が爆発する。繰り返される8分間の中で、彼は徐々に犯人に近づいていくのだが、その中である女性に恋をしてしまう。現実の任務遂行と、意識の世界で生きたいと思う彼の運命。ラストは本当に胸が締めつけられた。

【アーティスト】

ストーリーは単純明快!時はサイレント映画からトーキー映画の時代へと変わっていき、なおもサイレントにこだわる主人公ジョージの苦悩を描いた作品。21世紀に作られたサイレント映画ということもあり、単に昔の映画の撮り方や演技を再現しただけではなく、21世紀の今だからこそ、この作品を鑑賞する人も感情移入しやすく、そしてジョージの気持ちも理解できるだろう。だからこそ、逆にこの作品を80年くらい前の人が見たら理解できないかもしれない。

【カラフル】

まるで実写のようなアニメだ。死んだはずの主人公が、自殺した少年・真の体に移り、現世に戻るための再挑戦(修行)として、真の体で真としての生活が始まる。その中で、母親の不倫を知ったり、好きな女の子が援助交際をしていることを知ったり、中学生の少年にとってはあまりのショッキングなことで、主人公はだんだんと真の自殺の動機を理解していく。主人公は、真として生活する中で色々な経験を経てカラフルになっていく。中高生にぜひ観てほしい作品です。

【横道世之介】

世之介と祥子の友達以上恋人未満な関係が実に微笑ましいです。僕はタイムリーではないですが、この作品の設定はバブル絶頂であった80年代の日本であり、この時代の青春時代を過ごした方ならばきっとノスタルジーに浸れるでしょう。もちろん、そうでない今の若者が見ても十分に日本の懐かしさは伝わるのではないだろうか。現実にこんな二人を目の当たりにしてしまうと失笑してしまいそうやけど、この二人を映画の世界で見てしまうと一喜一憂してしまうことでしょう。

【さんかく】

高岡蒼甫が演じる百瀬がとにかくイタい。観ているこっちが恥ずかしくなってしまう。しかし、男なら百瀬のイタさは少しは共感してしまえるだろう。この作品は、男の深層心理なるものを見事に掘り起こしたようなもので、とにかくリアル。女性が観て共感できるかはわからへんけど、百瀬は男代表で、この作品を鑑賞する男たちは百瀬の思いを理解し、同じ想いで想像し、男代表の百瀬の気持ちがなぜか分かってしまうことだろう。痛々しい変態映画の名作です。

【英国王のスピーチ】

吃音症に悩む自分に自信が持てない英国王ジョージ6世が、聴覚士との友情により、その困難を乗り越えていくストーリーであると同時に、王と妻の夫婦愛をも描いた作品である。彼が本当に苦労したと言われる吃音をテーマにして、最初こんなテーマで2時間も大丈夫だろうかと思っていたのだが、これほど完成度の高い作品に出来上がるとは想定外だった。最後のスピーチは圧巻なのだが、何よりこの作品は王と聴覚士と妻の『距離感』が素晴らしいと心から思いました。

【猿の惑星:創世記】

ハリウッドがネタ切れになった時に必ずやっちゃう続編・リメイク・前日譚。基本的にこんなもんがおもろいわけないんやけど、これは結構良かった。人間って不思議やね。人が人を殺すと殺人。人が動物を殺すと処分。人が人のペットを殺すと器物破損。動物から見て人間の中に善人がいようが、所詮は偽善者なのだ。人間が反省猿というキャラクターを作り上げて、それを見て『可愛い』というリスナーがいたとしても、猿から見れば人間が反省しろよと突っ込まれるでしょう。

【ダークナイト ライジング】

前作の「ダークナイト」は、文句のつけどころがないくらい完璧すぎて、今作はハードルが高く、最終章としてもプレッシャーがあっただろう。実際、密度が濃すぎて説明不足な点がいくつかあったが、しかし、この作品に対する期待は裏切られることはなかった。あまりにも壮大な作品なのだ。今作の悪役?であるペインは、マスクを装着し、その迷いのない非道さで存在感が凄かったが、最後の方ではマスク越しやのに優しい人間の表情が見えたのが本当にグッときた。

【パシフィック・リム】

いや〜面白かった。冒頭から人類の敵である怪獣が登場し、そして人類最後の砦となるロボットが怪獣と激しい肉弾戦を繰り広げるのだ。もはや怪獣とロボットの攻防戦の繰り返しで、ストーリーなんて単純すぎるのだが、小さい頃から怪獣映画やロボットアニメが大好きで、ゴジラやウルトラマン、ガンダムやエヴァンゲリオン等に興奮していた僕にとってはたまらない作品だった。とにもかくにも、この作品はSFアクションモンスター映画のパイオニアとなるだろう。

【キャプテン・フィリップス】

この作品を鑑賞する前に、実は某テレビ番組の実話を元にした再現VTRで見てしまって、当時の実際の映像まで所々出てて内容は全部知っていたのですが、あの内容を130分もできるんか?あの当時の実際の映像の緊張感を表現できるんか?と不安を抱きつつも鑑賞。むしろ時間を感じさせへんほど面白かったです。まるで自分がその現場の近くにいて、遠くから船長の無事を願うことしかできひんと思ってしまうような作品やった。まさに九死に一生。

【ゼロ・ダーク・サーティ】

9.11のあの悲劇からビン・ラディン殺害までを映画化した作品。ほとんどが事実だろうが、一部はフィクションのストーリーなんやと思う。法律を無視するテロリストに法律で裁くのはやはり限界があり、やはり戦いが世の中から消えることはないのかもしれない。この作品を見て、ビン・ラディンというラスボスを倒すことで世界が平和になると考えてたマヤは、それでも世界は何一つ変わらないと感じたのかもしれないな。戦い続けられてるうちが、ある意味で平和なのかもしれない。

【スリーデイズ】

大学講師の主人公ジョンの妻が殺人で有罪になり、妻を刑務所から脱獄させるというストーリー。最初はガチガチの社会派映画と思ってたんですが、直球の娯楽映画に仕上がっていて、これはこれで引き込まれました。脱獄のプロから脱獄のアドバイスを受け、あらゆる手段で脱獄の計画や準備をし、ハラハラドキドキさせる演出は非常に良かった。また、この作品のいいところは、妻が実のところ有罪だったのか無罪だったのかを謎にしているところである。サスペンスとしても面白い。

【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い】

人の痛みが分かる人ならば、この作品が伝えたい悲しみがひしひしと伝わるかもしれない。アメリカはいつまであの911を引きずっていくのだろうか。もちろん、911を忘れることなんてアメリカのみならず、世界中の人々が忘れてはいけないし、永遠に悲しみが消えることはないだろう。でも、それらを怒りに変えるのは間違っているし、いつまでも前を向かないのはやはり切ないではないか。この作品は、ゆっくりでもいいから前向きに進もうという優しさのエールが込められている。